私はいわゆる「海なし県」の埼玉出身で、幼少期から海に漠然とした憧れを抱いていました。また、非日常の乗り物として船にも興味があり、当時考えていたのは航海士になることです。しかし、大学で航海実習などをするうちに、船自体の仕組みや構造などに興味が湧いてきて、大学院では船の設計や運動を解析する分野に専攻を変えました。就職を考えたときに大手の造船所も選択肢の一つにはあったのですが、造船業界は分業制のところが多いんですよね。私は船造りの全体に携わってみたかったので、当社を選びました。
現在は、主に官公庁船の設計や艤装、性能の計算や解析のほか、引き渡した後のアフターサービスといった仕事に関わっています。船全体や多くの造船工程に携わるので、常に俯瞰的な視点を持たなくてはなりません。不備がないよう綿密に設計したつもりでも、重量がかかるとかえってリスクになってしまうので、そのような試行錯誤の繰り返しです。船の試運転をする際は大きな緊張感を伴いますが、設計やイメージした通りに動いたときは大きな充実感があります。それまでのすべての苦労が報われるので、私が仕事をしていて一番好きな瞬間ともいえますね。
将来の夢として、私たちがこれまで手掛けてきた船を展示する「SUMIDAミュージアム」や、墨田川造船の技術を伝承していくための「SUMIDAライブラリー」といった施設をつくってみたいなと思っています。というのも、船や造船技術がどのように社会に役立っているか知ってもらったり、自分たちが未来に向けて何ができるか考えていくことが大切だと感じているからです。今も進水式をはじめ地域の方々と触れ合うイベントを積極的に実施していますが、今後はもっとコミュニケーションの機会を日常的に増やしていき、会社全体の意識を変えることでさらなる進化を果たしていきたいですね。
